2025年3月14日
針治療のミスによる事故・トラブル事例とリスク回避の対処法
カテゴリ: Q&A(よくある質問)
鍼灸治療は長くから伝統医療として成熟してきました。ただ、施術者の技量や管理の不備により、思わぬ事故やトラブルが発生するケースも報告されています。
例えば、鍼の誤った刺入で気胸や内臓損傷、出血、感染症といった重大な合併症が生じる危険性があります。本記事では、実際に起こった事例を解説した文献をもとに、当院でのリスク回避のための対処法や注意点を詳しく解説します。
安全な治療を受けるための施術者選びや衛生管理の徹底、施術前の十分なカウンセリングの重要性についても触れ、患者自身が安心して針治療を受けてもらうための情報を提供します。

この記事の執筆者
ミントはり灸院 院長
森本 賢司
高度専門鍼灸師
【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師
【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証
針治療のミスによる事故例
国内最も鍼灸の論文が集まっている医中誌Webに収録された有害事象論文(2009年から2013年)を調べると以下のようになりました。
・鍼に関連する有害事象:28文献(34症例)
・灸に関連する有害事象:2文献(2症例)
この数が多いのか少ないのかの判断はとても難しいのですが、消費者センターのPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)を使って調べてみると
マッサージや整骨院、整体院などの施術等における消費者相談件数を推計すると約2400件程度となりました。
鍼灸院の場合だと約800件程度と推計されます。
これは1施設あたり年間で0.5件程度だそうです。
近年は美容鍼灸に関する相談が年20%のペースで増加しています。
鍼灸治療で起こりうるトラブル
鍼灸に関する有害事象(トラブル)の文献で紹介されていた多い事例を紹介します。
鍼治療による気胸
鍼治療による気胸は、鍼が肺に達し胸腔内に空気が漏れることで発生する医原性気胸です。
背部や胸部の鍼治療で、鍼が深く刺さりすぎて肺を傷つけることが主な原因です。特に肩甲骨付近や肋間筋付近の刺鍼でリスクが高まります
文献の事例では
肩痛の治療で鍼を受けたバレーボール選手が片側性気胸を発症。施術中または直後に症状が出現した例があります。
折鍼(せっしん)事故
鍼治療中に鍼が体内で折れてしまう医療事故のことです。
鍼は非常に丈夫なので折れることはありませんが以下の条件で発生する確率が高まります。
・鍼を刺した状態で患者が体を動かしたり、筋肉が収縮すると、鍼が曲がり折れることがあります。
・深く刺した状態で運動鍼(刺鍼部位を動かす技法)を行うと、鍼が折れる可能性があります。
・電気刺激を行う際に適切な太さや素材の鍼を使用しない場合、腐食によって鍼が弱くなり折れることがあります。
・筋力の強い患者に対して細い鍼を使用すると折れるリスクが高まります
過去には福岡ソフトバンクホークスの選手が腰部への鍼治療中に折鍼事故を経験し、体内に残った鍼を切開手術で摘出する事例がありました。
これは鍼をしたまま体を動かしたことが原因だと言われています。
腎臓や内臓など体の内部に鍼が残る事故
鍼治療による内臓への出血事故は稀ですが、重大な合併症として報告されています。
74歳女性の症例では、約10年前の腰痛治療のための埋没鍼が原因で腎臓結石と尿管結石が形成されました。
埋没鍼は禁止されている方法なので、このような報告があったことは鍼灸業界を騒がせました。
鍼灸でのやけどや内出血
鍼治療後に内出血が起こることがあります。主な原因は毛細血管の損傷により、皮下組織に血液が滲み出すことで発生します。血管が硬く弾性力が低下している場合や、周辺組織の循環不良や皮膚や筋肉の緊張度によっても起こりやすくなります。
通常、数週間程度で消失し、跡が残ることはほとんどありませんが、熟練した鍼灸師でも完全に避けることは困難です。出血しやすい薬を飲んでいる場合は鍼をしないという選択肢を提示する場合もあります。
なので、美容鍼灸では相談件数として増えているのでしょう。
やけどについてはお灸の施術や熱を発する器具をつかっている場合においてリスクが高まります。
昔に比べて今のお灸は低温になり、かなり火傷が発生しにくくなりました。
ただ、熱感に個人差があることや皮膚の状態によって、火傷の確率は変わってくるので、こちらについても完全に0にするのは難しいと言われています。
熱い方が効くというのは誤解です。「温かくて気持ちいい」と感じる温度が最も効果的です。
体調や気温によって熱さの感じ方が変わるため、少しでも熱いと感じたら即座に鍼灸師に伝えましょう。
感染症
皮膚に常在する菌が鍼を介して体内に入ることで感染症をおこすことがあります。
皮膚表面であればニキビのような小さな肌荒れができますが、体の内部に菌が侵入すると大きなトラブルになる場合があります。
とくに糖尿病やステロイドの長期服用などで易感染性をお持ちの方が要注意となります。
糖尿病の患者が左足底に鍼灸治療を行ったことが原因で感染症にかかり左下腿にかけて壊死したしまった事例があったそうです。
鍼灸治療のトラブルを防ぐには
これまでに紹介してきたトラブルはどれも、そのリスクを下げることができます。
そもそも医療過誤が発生することが少ない施術ですが、さらにリスクを下げることで安全を担保できます。
そのポイントは鍼の深さと置鍼をしないということです。
多くの事例の場合は、刺した鍼の深さが深くなりすぎることでリスクが高まっていました。気胸などは安全深度に達しないだけでなく余裕のある深さで施術することです。
鍼が折れてしまうのは置鍼が主な原因です。置鍼したまま現場を離れるのが鍼灸の施術に多いですが、それは極力避けるべきです。
ちなみに当院では上記の2点について徹底しています。
内出血と火傷については確実に0にはできないので難しいところがありますが、患者さんに合わせた対応が必要となります。
信頼できる治療院を選ぶ
信頼できる治療院は沢山ありますが、今回の事故を未然に防ぐという意味での選ぶポイントとしては先ほど紹介した施術の方法で選ぶのも良いと思います。
またはHPなどでちゃんとトラブルを防ぐための対策法が記載されているかも確認しましょう。
書いていないところは問い合わせ時に確認してもよいでしょう。
問診できちんと情報を伝える
心配なことは事前に伝えておくと施術者はより注意しますので、施術前には心配に思っていることを言いましょう。
どうしても話しづらい場合はメモに書いて担当者に渡すのも良い方法です。私も何度もメモをもらいました。とても助かります。
特に糖尿病などの病気をお持ちで感染症にかかりやすい人は事前にかかりつけ医に相談することを忘れないでください。
治療中の違和感を我慢しない
施術中は担当する鍼灸師と自由に話をしてかまいません。
鍼やお灸をうけて感じていることを素直に伝えてみてください。
その言葉を受けて刺激量を調整する場合があります。
ただ、体を動かすときは必ず事前に承諾を取ってください。
例えば「右の肩のこのあたり」って言いながら鍼が刺さっているのに思いっきり体をねじって場所を示してくれたりしますがとても危険です。
施術を受けているときは「体はストップ、口は動かす」です。
コミュニケーションに無駄はありません。
まとめ
今回は鍼灸で起きるの医療過誤(事故)について解説しました。
怖いと思ったでしょうが、鍼灸はとっても安全な治療法です。
さらに全ての鍼灸師は国家資格を有しており、こういった教育を受けています。
ただ中には安全の意識が低い人がいることもありますので、事前の確認をしておきましょう。
今回の記事を書くにあたって以下の文章を参考にしました。
参考:鍼灸関連有害事象に関する調査(https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/148011/201450001A_upload/201450001A0008.pdf)
参考:鍼灸事故4症例(https://shinkyu-net.jp/archives/2418)
参考:全日本鍼灸学会(https://jsam.jp/important/important-notice20220427/)
参考:鍼治療後に生じた両側性気胸の1症例(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaamkanto/41/2/41_271/_pdf/-char/ja)
当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。